近年トラックマンなど高性能弾道測定器の普及により、弾道とインパクト時の現象の関係が科学的に明らかになってきました。それにはトラックマンなどが弾道測定計算に利用している、「Dプレーン理論」という理論が大きく関連してくるのですが、それによると、弾道に関してこれまで感覚的に行っていたことと真逆の力学が働いていることが明らかになってきました。
そこでまずは「Dプレーン理論」について説明していきます。
「Dプレーン理論」以前は、ボールの打ち出し方向を決めるのはスイング軌道、曲がる要因はインパクト時のフェースの向きにあるとされてきました。つまりアウトサイドイン軌道なら左へ、インサイドアウトなら右へボールが打ち出され、インパクト時にフェースが開けば右に曲がり閉じれば左に曲がる、といった具合です。
しかしDプレーン理論により、ボールの打ち出し方向を決める最大の要因はフェースの向きであり、曲がる最大の要因はスイング軌道にあるという、全く逆の概念が明らかになりました。理論上フェースの向きが打ち出し方向に与える影響はドライバーでは約80%、アイアンでも約70%に上るとされています。
またDプレーン理論ではサイドスピンという概念はありません。あるのはバックスピンのみであり、回転数と回転軸がどのように傾いているかで曲がり幅が決まります。回転軸が右に傾けば右に曲がり、左に傾けば左に曲がっていきます。
打ち出されたボールの曲がる量は、フェースの向きだけではなく、インパクト時のスイング軌道とのズレによって決まります。フェースの向きと軌道が一致していればフェース向く方向に真っ直ぐ打ち出され、そのズレが大きいほど回転軸も傾くため、曲がり幅も大きくなります。
例えば本当のドローボールは、右に打ち出され左に戻ってくるボールの事を言いますが、これまでは「ドロー回転を掛けたければフェイスを閉じる」と教えられた方もいらっしゃると思います。しかし、これでは目標に対して左に打ち出し、さらに左に曲がっていくフックボールにしかなりません。
「Dプレーン理論」では、右に打ち出したければフェイスは開き、スイングをインサイドアウトに振る事で、ボールは右に打ち出され左に戻ってくるドローボールが打てることになります。
さらに「Dプレーン理論」は打ち出し角とスピン量にも関係してきます。ボールがどの様な角度で打ち出され、どのぐらいのスピンが掛かるかは、クラブヘッドの入射角(アタックアングル)とインパクト時のロフト(ダイナミックロフト)の差によって決まります。
もちろん「スイートスポットでボールをとらえている」というのがこれらの現象の前提としてあるのですが、Dプレーン理論をご存知でなかったならば、これまでミスに対してのアプローチが全く逆であった可能性があります。
「打ち出し方向」「曲がる方向」「打ち出し角」からDプレーン理論によって自分のミスを正確に把握し、正しく修正していくことが上達への近道になるでしょう。